モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 ロゼの記憶を持つようになってベアトリスの記憶は薄まっているけれど、今ふと思い出した。

「そうなのか? そのようには見えなかったな」

 ユリアンが目を丸くして驚く。

「平気なふりをしていましたから。でも練習したようにうまく笑えなくて、公爵邸に帰ってから悔しくて悲しくて泣きました」
「泣いた?」
「はい。王太子殿下に嫌われてしまったって。あの頃は仲よくしたら王太子殿下の婚約者になれるんだと思っていたんです。政略結婚の意味をよくわかっていませんでしたから」

 実際はベアトリスがどんな失敗をしても、王太子の婚約者になると決まっていた。ユリアンが王位を継ぐためには、クロイツァー公爵家のうしろ盾が必要だからだ。だからこれまでベアトリスがどんなにひどい行動をしても、婚約解消にまでは至らなかったのだ。

 ただ幼い頃はそんなしがらみを知るはずもなく、ユリアンの態度に一喜一憂していた。

(そう考えると、以前の私は初めからユリアン王太子が好きだったのね)

 それなのになぜ険悪な関係になってしまったのかは謎だが。好きならもっと素直になって優しい態度を取ればよかったのに。自分のことなのだが今となっては理解が難しい。

「……意外だな」

 ユリアンがぽつりと言った。

「そうですか?」
「ああ。私は初対面のときからよく思われていないと思っていた」
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