モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
 頭の中に地図を浮かべる。深淵の森は王家直轄領とクロイツァー公爵の領地を分けるように左右に広がっていて、巨大な森なので入口が幾つかある。討伐訓練で使用する入口近くに村があるのだろう。

「でも、私は聖女様の人物像を知らないので、手がかりを探せと言われても……目印でもあればいいのでしょうが、あるわけがないですものね」

 そう言うとユリアンが目を丸くする。同時にイライラしたようなツェザールの声が割り込んできた。

「聖女は左手に印を持って生まれてくる。そんなの常識だろ?」
「そ、そうなのですか?」

 あまりの剣幕に、ベアトリスは若干引いてしまう。 

(そこまで怒ることないのに)
 
 なんて短気な人だろうか。

 「ツェザール、やめろ」
 
 ツェザールに比べたら格段落ち着きがあるゲオルグが会話に入ってきた。といってもベアトリスに優しいわけじゃない。

「クロイツァー公爵令嬢。王太子殿下の婚約者として、今の発言は問題がありますね。聖女は強い魔力を持っており、手には神木を模した印を持っている。これは貴族の子息令嬢なら幼い頃に必ず習う常識です」
「そ、そうでした。うっかりしてました」

(常識って言われても、ベアトリスの記憶にないんだけど。習ったのに忘れちゃったのかな……それとも前世の記憶が蘇ったときに消えてしまった?)
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