モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「……はあ」
部屋を出た後、ベアトリスはため息をつきながら、車寄せに向かって廊下をとぼとぼ歩いていた。
(決心したものの、ユリアン王太子たちと一緒に聖女様捜しなんて、大変そうだわ……)
魔獣はユリアンが手助けしてくれるようだからけがの心配はなくなったとはいえ、精神的にかなり疲弊しそうだ。
(そうだ。訓練が終わったらカロリーネとケーキを食べてお疲れさま会を開こうと約束してたけど、別の日に変えなくてはね……)
ベアトリスは憂鬱な討伐訓練のあとのご褒美を、心から楽しみにしていた。張りきって王都で人気のカフェを予約までしただけに残念だ。
肩を落としたとき、乱暴な足音が近づいてきた。
「クロイツァー公爵令嬢!」
怒鳴るように呼びつける声。驚きながら振り返るとそこにいたのはツェザールだった。
彼はとくにベアトリスを嫌っている様子なのに、なぜ追いかけてきたのか。
警戒しているとツェザールは距離を縮めてきて、ベアトリスのすぐ前で立ち止まり見下ろしてきた。
(うう、すごい威圧感……)
体の大きなツェザールに睨まれている状況は、不安しかない。ベアトリスは心拍数が上がった胸を押さえて口を開いた。
「あの、ツェザール様、私になにかご用ですか?」
「最近方針を変えたようだが、そんなことをしても無駄だ」
居丈高に告げられて、ベアトリスはぽかんと口を開けた。
彼の言葉の意味がまったくわからないからだ。
「おっしゃる意味が……」
「そうやってしおらしいふりをしてユリアンの気を引こうとしているようだが、あんたの魂胆は見え見えだ」
(え……魂胆なんてないんだけど)
「聖女についてすら知らないあんたに、王太子妃が務まるはずがない」
それはベアトリスも同感だ。