モフぴよ精霊と領地でのんびり暮らすので、嫌われ公爵令嬢は冷徹王太子と婚約破棄したい
「聖女が見つかったら彼女がユリアンの妃になる」
「えっ!」

 ベアトリスは思わず高い声をあげてしまった。

(聖女様がユリアン王太子の妃に? ということは、私はお役ご免ってことよね?)

 無言になったベアトリスの反応をショックを受けたからと勘違いしたのか、ツェザールはにやりと笑い高々と宣言する。

「残念だったな。だがもうわずかのチャンスもない! 王太子の婚約者から外れたらこれまでの悪事についても追及してやる。せいぜい震えて待ってろよ!」

 すがすがしいくらいの捨てゼリフを残し、ツェザールは去っていった。

(も、ものすごく嫌われているみたい)

 それはわかっていたが、予想以上だと実感した。気に食わないとか嫌いというよりも、心から憎んでいると表現した方がふさわしい態度だ。

 過去に彼と個人的に問題があったのだろうか。

 いや、今はそんなことよりも。

 ベアトリスは知ったばかりの情報に心を躍らせた。

 聖女が見つかったら、円満に王太子の婚約者から外れることが出来るのだ。

(ああ、ついにこのときが……なんて素晴らしいの!)

 待ちに待っていた婚約の解消。プレッシャーから解放された爽快感でいっぱいだ。

 喜びが抑えきれず、ふふふと笑いが漏れてしまう。貴族令嬢としてあるまじき顔になっていそうだ。ベアトリスは口もとを押さえて、通りすがりの人に顔が見られないようにうつむいた。
(婚約解消されたあとは自由よね。領地に帰って、計画していた孤児院の運営をして、休みが取れたら観光に出かけて……やりたいことが山ほどあるわ!)

 不安よりも大きな意欲が心を満たし、ぐっと右の拳を握る。

(がんばって聖女様を捜さなくちゃ)

 ベアトリスは軽やかな足取りで、公爵家の馬車に向かった。

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