悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
 ステラ・オールブライト。その新入生の名前を耳にした時、私は全身が強張るのを感じた。このゲームのヒロインの名前だ。いよいよ、ゲームの幕が降りた。

「そのステラという生徒は、光魔法の使い手なのだそうですよ」
「珍しいね」
「ええ、かなり」

 今はクリス様とキース様、そしてお兄様といつも通りランチをいただいている最中だ。
 何かと注目を集める彼らは、人目を避けて生徒会室でランチタイムを過ごしている。クリス様は生徒会長であり、お兄様は副会長、キース様は会計と、なんだかこの国の未来の縮小版のような顔揃えだ。

 アラン様も生徒会メンバーなのだが、聖騎士の任務で忙しく、滅多にランチにはいらっしゃらないそうだ。絶対クリス様が裏で手を回してるでしょうけれど。

 私とお兄様は揃いのサンドイッチセット。最近私がマヨネーズを開発したところ、それを気に入った公爵家の人たちがやたらとマヨネーズを使う料理を作りたがるのだ。
 特にお兄様はサンドイッチがお気に入りで、私たちのランチはここのところずっとサンドイッチだ。今日は鶏肉の照り焼きとキャベツ、マヨネーズを挟んだものと、レタスと卵マヨサンドの二種。

「リディア嬢とステラ嬢は同級生ですよね」
「リディはその生徒と話してみたことはある?」
「……」
「リディ?」
「い、いえ。なんでもありませんわ」

 新入生の話になり、彼女の名前がキース様から出てきて動揺した。彼女が希少な光魔法の使い手だということは、学園中の噂になっているようだ。

「そう? それにしても今年の新入生はリディといい、ステラという女子生徒といい、能力の高い生徒が多いようだね」
「我々の学年も、貴方とアラン、ディーンまでいるんですから負けていないでしょう」
「キースもね」

 ゲーム通りならば、頭脳ではクリス様とキース様、剣術ではアラン様、魔術ではお兄様が秀でている設定だった。
 だが、お兄様は私との特訓のお陰で魔術だけでなく剣術も秀でているし、クリス様に至っては成績も剣術も魔術もこの学園一の実力だ。

「クリスは入学以来、全科目でずっと一位だもんな」
「ディーンは魔法省からも聖騎士団からもスカウトされてるじゃないか」
「次期公爵なのに身体がいくつあっても足りませんね」
「おい、キース。お前が生徒会だけじゃなくて国の予算案も練ってるの知ってるんだぞ」
「それは機密事項ですよ?」

 キース様が黒い笑みを浮かべる。
 そうなのだ。学園に入り、改めて側で彼ら攻略対象キャラを見ていると、ものすごいポテンシャルを秘めていて、全員大活躍している。何故か私の前ではアラン様の話題が出ないのだが、アラン様も聖騎士団で頭角を出し、歴代最年少で第二騎士団の団長をされているのだとか。
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