悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
 しかし何よりクリス様は別格にすごい。

 学園の勉強では常に一位でありながら、王太子としての公務もこなす。その際、私も婚約者として同行したりするのだが、いつもフォローされてばかりで癪に触るのだ! クリス様は他国情報にも詳しく外国語も堪能で、政治的な駆け引きも上手い。

 その上、剣術はついに私は歯が立たなくなってしまった。公爵家騎士のハロルドには勝てるくらいに鍛えたにもかかわらず、だ。我が国の王太子は、剣では決して暗殺出来ないだろう。

 そして魔法も、私が数年かけて聖魔法を習得したのに、クリス様は僅か数ヶ月で聖魔法が使えるようになってしまった。

 完璧すぎる。

 悪役令嬢よりもメインキャラの方がチートってことなんでしょうか!?

 死ぬ運命を変える為、色々頑張ってきたのに、あっさり何もかも越えられて私のプライドはズタズタだった。

「リディだって素晴らしい女性だよ。僕の女神様だ」
「取ってつけたように褒めていただかなくて結構ですわ」
「本気なのにな」

 いつも通りの甘い顔。そのお顔だって、これからヒロインと仲良くなれば、もう見せてくださらないに違いない。

 私は顔が怖いし、上位貴族だし、王太子の婚約者ということもあって、他の生徒もあまり話しかけてくれない。寂しい学園生活だ。おまけにクリス様に勝てるものもなく、なんだか悲しい。

 クリス様のようにお友達がいれば楽しくなるのに。

(……そうだわ。私もお友達を作ればいいのよ)

 そうすればランチだって友達と食べれば良い。もしヒロインがクリス様のルートを選んだとしても、クリス様がヒロインと仲良くなっていく様子を見なくてすむのだ。

「私も頑張らなくては! まずはお友達を作りますわ!」
「!?」
「いつまでもクリス様を頼っていてはいけませんものね! 運命にも勝たなくちゃ」
「? いや、いつまでも私を頼って欲しいのだけれど」

 突然友達を作ると宣言した私を見て、クリス様は驚いた表情をしている。今は色々勝てませんけど、友人の数くらいなら、クリス様にも勝てるかもしれませんわ!

「クリス様のように、信頼できる友人をたくさん作りますわよ! ではご機嫌よう!」

 そうして私はお昼のサンドイッチを入れていたカゴを丁寧に片付けて、自分の教室へと急いで戻った。できれば可愛くて優しくて魔法も得意なお友達をゲットするために!

「あいつ、時々ちょっとズレてるんだよな」
「可愛らしいけどね」
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