敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 国家間の取り決めで私はアドランス王国の王籍を外れ、ジークフリード殿下の側妃となるべく嫁いできた。けれどガルニア王国の法において、私たちはいまだ婚姻の締結に至っていない。
 殿下の言うように、来月国教会で行う予定の婚姻の儀をもって正式に側妃と認められるのだが……。それまでに殿下は、なにをしようというのかしら。
「ありがとう、エミリア」
 殿下がふわりと相好を崩し、私にスッと手を伸ばす。大きな手のひらがそっと頬を包み込む。
 彼の指先が感触を確かめるように幾度か頬を撫でてから、ゆっくりと位置を下げていく。私はこそばゆい刺激に肩を竦め、彼の視線から逃げるように俯いた。
 頬のラインを辿り、長い指がおとがいにかかる。
 指先に僅かに力が篭もり、クイッと上を向かされる。見上げた視界にセルリアンブルーの双眸がアップに迫り──。
 ──パシャン!
 唇同士が今まさに触れ合おうかという瞬間、不自然に水面が揺れ、水しぶきが殿下を襲う。
「なんだ!?」
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