敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「なにより今夜の舞踏会は殿下が望んでエミリア様を伴うと決めたのです。誰にも文句を言われる筋合いはありません。堂々としていてくださいませ。どうぞ華やかな舞踏会を心ゆくまで楽しんできてください」
 アニータはきっと、本心からそう言ってくれている。侍女という立場を超えて示される彼女の優しさが、私には拠り所だ。
「ありがとう、アニータ。あなたのおかげで気が楽になったわ」
 アニータに優しく背中を押され、私の心は上向いた。


 日が沈み、満天の星々が空の主役に変わる頃。
 燭台で煌々と照らされた王宮の大広間は、多くの紳士淑女が集いさんざめいていた。
 私は父が生きていた頃にだって着たことのない素晴らしい仕立てのドレスに身を包み、ジークフリード殿下のエスコートで人生で初めての舞踏会に向かう。
「綺麗だ。今夜の君は奇跡のように美しい。舞踏会の主役は間違いなく君だ」
 殿下の賛辞がこそばゆくも嬉しくて。頬が綻みそうになるけれど、その言葉が正しくないことを私は知っている。
< 109 / 265 >

この作品をシェア

pagetop