敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 すると下げた頭にバシッという衝撃がきて、額から髪の生え際あたりにジクジクとした痛みを覚えた。
 どうやら女王が持っていた扇を投げつけられたらしい。そっと頭に手をやると濡れた感触がして、血が出ているようだった。
 ……いけない。絨毯を血で汚しでもしたら、また面倒なことになるわ。
 慌ててポケットからハンカチ代わりの端切れを取り出して押し当てた。
「ハッ! 不愉快だ、これ以上其方の顔など見たくもない! さっさと出て行け!」
「御前、失礼いたします」
 立ち上がると頭が少しくらくらしたけれど、もたもたしていては女王がさらに機嫌を悪くするかもしれない。
 最後にひとつお辞儀をして、逃げるように謁見の間を後にした。

 足を緩めぬまま廊下を進む。
 途中で幾人か城勤めの使用人らと行き合う。ある者は呪われた王女を見て恐ろしげに身震いして廊下の端に逃げ、またある者は血濡れの布を頭に押し当てて歩く様子に気の毒そうな目を向ける。
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