敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 殿下が氷点下の声音で言い放ち、腕に縋りついたままのイベンヌ様を容赦なく突き飛ばす。
「ヒィッ!!」
 イベンヌ様は悲鳴をあげ、床に尻もちをついた。さすがにさっきまでの勢いは消え、その体は恐怖で小刻みに震えている。
 誰かがゴクリと喉を鳴らした音が妙に大きく響く。
 肌を刺すような緊張感が会場内を満たしていた。
「やめよ、ジークフリード! いったい娘がなにをしたというのだ!?」
 ここで騒ぎに気づいたブリジッタ様が人垣を割って駆けてきて、イベンヌ様を庇うように殿下の前に立った。
「お、お母様……っ」
 泣きべそで怯えるイベンヌ様と憤怒を隠そうともしない殿下を交互に見て、ブリジッタ様は眉をひそめた。そうして僅かな逡巡の後、グッと唇を引き結んで殿下に向かって頭を下げた。
「娘がなにか礼を欠いたなら謝罪する。怒りを収めてもらえんか」
 第一印象で高圧的な女性だと敬遠したが、王姉というだけあって物を見る目はあるようだ。どうやら彼女は状況から娘の瑕疵を悟ったらしい。
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