敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 甘やかな声で乞われ、ピクンと脈が跳ねる。
 どうやら殿下は、自ら先陣を切って踊ることで、会場内の重い空気を変えたいらしい。
「どうか俺と踊っていただきたい」
 スッと差し出された大きな手を注視した。節ができ、剣や弓の鍛錬ですっかり硬くなった手のひら。一見すれば無骨にも見えるその手が、ガラス細工にでも触れるような丁寧さで髪を梳き、やわらかなタッチで頭を撫でるのを知っている。
 私はゴクリと喉を鳴らし、殿下の手におずおずと指先を乗せた。
 経緯は関係ない。ただ、殿下と踊れることが純粋に嬉しかった。
「喜んで」
 手と手が触れただけで、ジンッと全身に熱が広がる。逞しい手にすっぽりと包み込まれるとキュッと胸が苦しくなって、目の前の殿下のこと以外なにも考えられなくなった。
「『次の時』がずいぶん早まったが、嬉しい誤算だ」
 ドキドキと鼓動が胸を突き破りそうなくらい鳴っていた。
「はい。私も嬉しいです」
 消え入りそうな声で答え、まばゆい笑みの殿下に手を引かれて会場の中央へと進んでいく。
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