敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「隠さなくても大丈夫です。ただ、そろそろ振る舞いを慎み、身持ちをよくするといいのではないでしょうか。遠からずお迎えする正妃様のためにも」
「っ!」
 殿下は絶句していた。
 あら? ふいに周囲に生温い空気が漂ったような気がした。
 ……気のせいかしら?
「ジーク様が『色事に長けて』って……ブフッ!」
「ってか、たしか殿下って素人童て──」
「待てっ!! それ以上はいけません! 化け物級に地獄耳はなんですから!」
 さらに行き交う人々の楽しげな会話や活気ある商店の呼び込みの声に交じって、コソコソと言い合う男性たちの声がした。さすがに内容まではわからなかったが、声のひとつに聞き覚えがある気がして小さく首を捻った。
 そうして何気なく隣の殿下を見たら、般若の様相をしているのに気づき、ビクッと肩が跳ねた。
「エミリア、すまんが少し外す。すぐに戻る」
 殿下が地を這う声音で言い残し、人混みに消えていった。
「待たせたな」
 殿下はいくらもせずに戻ってきた。
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