敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「いえ、お早かったですね。御用はもう済んだのですか」
「ああ、問題なく」
 彼の表情は、すっかり普段の穏やかさを取り戻していた。
「そうですか」
 私たちは再び肩を並べ、白壁の家々が並ぶ居住区を歩きだした。けれどさっきの話が尾を引いてか、ふたりの間にはほんの少し気まずい空気が流れていた。
 ……ずいぶんと出過ぎたことを言ってしまったものね。
 殿下と正妃様がどんな関係を築いていくのかはふたりの問題で、私が差し出るところではない。胸に後悔がよぎったけれど、だからといって謝るのもなんだか違う気がした。
「さっきの件だが──」
「まぁ! あれはなにかしら!」
 殿下に蒸し返されそうになり、私は卑怯にもわざと大きな声をあげて注意を逸らした。
 前方に人だかりができていて、カラフルなボールが人々の頭を上をくるくると飛んでいた。
「……ああ、あれはジャグリングだな。客の呼び込みでパフォーマンスをしているようだ。中央広場に移動サーカスが来ていているのだろう」
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