敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 流れ続ける水はかなりの量になったが、その全てが地面に染みていく。野外興行でテントの下が剥き出しの地面だったのが幸いした。
 途中で、私の斜め前方に立っている殿下を窺い見る。彼は口を噤み静かに処置の様子を眺めていた。その目には驚きも恐れもなかった。
 感情に揺らぎのない彼の様子を見るに、もしかすると私の能力を既に知っていたのかもしれないと思った。
 流水の注ぐ音だけが僅かに響く。静謐な時間が流れていた。
 ──カタン。
 流水で患部を冷やし始めて二十分が経とうかという頃、目張り布の向う側で小さな物音がした。
 次いで、布越しにハウイットさんの声がかかる。
「殿下、医師が到着しました。表で待機させています」
 殿下に「通していいのか?」と目線で問われ、私は首を横に振って答える。
 正確に私の意図を読み取った殿下は、ハウイットさんに短く告げた。
「少し待て」
「タイミングがよくなったらお声がけください。医師と共に表におります」
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