敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 主だった街路は逃げ出そうとする人々の他、馬車や荷車がギチギチに詰まり、前にも後ろにも身動きが取れない状態になっている。群衆を統制すべく王宮にほど近い騎士団から騎馬列を組んで出発する騎士たちの姿が確認できたが、路を埋め尽くす人々に阻まれて立ち往生している。
 時折、喧騒に交じって管轄の警備局員が鳴らす警笛の音が聞こえたが、大挙して押し寄せる人々を前に機能しているとは言い難い。
 無秩序な街の様子に恐怖を覚えた。このままでは遠からず、二次的な災害が生じてしまいそうだ。
「いったいどうしたら……」
 ここでふと、精霊たちの気配がないことに気づく。彼らとて四六時中私の側にいるわけではないから、それ自体はなんら珍しいことではないのだが。
 けれど、これまでだったら強い風が私を煽るような状況を見れば、シルフの方から飛んできて風を弱めてくれていただろう。
 不測の状況に彼らが一向に姿を現わさないことに違和感を覚えた。
「シルフ? みんな、いないの?」
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