敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「初代王モーリスが生きた三千年前にも今と同じことが起こった。空が禍々しい赤色に染まり、そして幾千もの火球が大地を襲ったんだ。人には到底ままならぬ状況を見兼ねた精霊神は、果敢な青年モーリスに打開の一手となる道具を与え、その行動を試した。結果的にモーリスはそれを見事に使いこなし、災厄から人々を守り切ってみせた」
「なんと。災厄に際し、人を試して高みの見物を決め込む。建国の神と讃えられる精霊神は、なかなかいい性格をしているようですね」
 ハウイットが漏らした台詞に苦笑が浮かぶ。
「ああ。彼らは人への温情に溢れる神ではない」
 ……ただひとり、エミリアへの献身と慈愛を除いては。
 脳裏に、舞踏会の夜に垣間見た精霊神の姿が過ぎった。
「そして今度はジーク様が試されていると、そうおっしゃるのですね」
 エーテル山の麓にたどり着き、入山口から続く山道を騎乗のまま俺が先頭になって進む。ハウイットも巧みな手綱捌きで、ピタリと俺の後ろに付いてきた。
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