敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「ちょっと忘れ物。いつか返そうと思いながら、ついつい忘れちゃって……うん、これでよし」
 引き出しの中から懐紙で包んだ私の親指くらいの大きさの物を取り出すと、ネグリジェのポケットに入れる。
 そうして今度こそ、ジーク様の部屋へと向かった。

 ジーク様の姿は、バルコニーにあった。
 ──カタン。
「ここにいたんですね」
 バルコニーに続くガラス扉を開けて声をかけた。振り返ったジーク様は、私の姿を見ると一瞬目を見張った。
「ここは冷えるから、中に入ろう」
 彼はそう言って歩み寄ろうとする私を制し、そっと肩を抱いて一緒に室内に戻った。
 私とジーク様は並んで寝台に腰かけた。
「ジーク様、もしかしてなにか悩み事ですか?」
 窺うように私が切り出すと、ジーク様は意外だとでもいうように首をかしげて見返した。
「なぜそう思う?」
「だって、さっきのジーク様。眉間に深々と皺を寄せていらっしゃったから」
 私の言葉にジーク様は苦り切った表情を浮かべ、ふっと宙を仰ぎ見た。
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