敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 胡乱な目を向けるハウイットに、さっさと行けと扉を示す。
「なんのことかわからん。王の妃になる人物の人となりを事前に把握するのは、最側近のお前にとって重要度の高い仕事といえよう。それにお前は明日から休暇の予定だから、ちょうどよかろう」
 一度した指示を覆すつもりはない。
 頑とした俺の様子に思うところがあったのか、ハウイットはため息をひとつつき補佐官席の椅子の背にかけていたマントを掴み上げた。
「……いってまいります」
「ああ、頼んだ」
 俺にヒラリと背中を向け、政務室を出ていくハウイットのうしろ姿を見送る。
 腹心のハウイットに任せたのだから、形だけ迎え入れる側妃のことでこれ以上俺が気を揉む必要はない。さっさと不在中にたまった政務を片付けるとするか。
 椅子に腰を下ろし、さっそくうず高く積み上がった書類を手に取った。

 当面は溜まった政務をこなしながら平穏な日々を過ごした。
 そうしてハウイットの出立から数日が経ったある日。伝書鷹が政務室の窓をつついた。
 ──カンカン。
< 27 / 265 >

この作品をシェア

pagetop