敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「ハウイットからか」
 長く温めた椅子から立ち、奥の窓を開け放つ。昼前から急に降り出した激しい雨はすっかり止んでいたが、窓から見下ろす地面にはいくつも水たまりができて、雨の激しさを物語っていた。
「急な雨で大変だったな。ご苦労だった」
 鷹を労い、足に括られた小さな筒を外す。雨は筒の中まで浸透し、取り出した手紙はぐっしょりと濡れそぼってしまっていた。
 ……おいおい。ハウイットの奴、油紙で水濡れを防ぐのを忘れるとはどういうつもりだ。
 公的な文書でなかったから油断したのか、よほど慌てていたのか……いや、それはないか。ともあれ、慎重な奴が取るべき対策を怠るのは非常に珍しいことだった。
 濡れた紙が破れぬよう慎重に開き、短い文面に素早く目線を走らせる。
【姫様は大変気****い方です】
 ところが肝心な部分が水に濡れてインクが滲み、読めたものではない。濡れた手紙を握りしめ、わなわなと体を震わせる。
 これではなにを伝えたいのかまったくわからん!
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