敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 表情は見えないけれど、なんとなく彼が困惑しているように感じた。
「エミリア王女、間もなく出立いたします。馬車にお戻りください」
「はい」
 ハウイットさんに声をかけられて、私は鎧の騎士様に会釈して馬車に向かった。なぜかハウイットさんの声は少し上擦っていた。
《なんだあいつ、べー!》
 宙からふわりと現れたシルフが鎧の騎士様に向かって舌を出す。思わず吹き出しそうになったのを慌てて咳払いで誤魔化して、すまし顔で馬車に乗り込んだ。
 馬車が走り出しチラリと車窓に目を向けたら、騎馬で並走する鎧の騎士様の横姿が見えた。その向こうには騎乗したハウイットさんがいた。
「あの伝書……雨に濡れ……」
「なんと!? どうやら私も相当動揺し……すみません」
「それでお前はなんと……」
 ふたりはなにか言い合っているようだった。換気のために薄く開けていた窓から、途切れ途切れにふたりの声が聞こえてくる。
「……気立てがよい方だ、と……申し訳……」
「ふざけるな! おかげで俺は……!?」
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