敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 突然響いた鎧の騎士様の怒声にビクンと肩が揺れる。すると怯えた私の視線に気づいたのか、鎧の騎士様は気まずそうに私から顔を背けた。
それ以降、声をひそめたふたりの会話は車内まで聞こえてこなかった。
《あのように声を荒らげるなど、なんと野蛮な》
 私の対面に現れたディーノが嫌そうに柳眉を寄せた。
《嬢ちゃんにもずいぶん無礼な物言いじゃったのう》
 足もとから現れたノーム爺も憤慨した様子だ。
《なに、あんまり目に余るようなら俺が灰にしてやるから遠慮せず言えよ》
 サラマンダーの申し出を苦笑いで辞退して、景色を眺める傍らそっと彼の様子を眺めた。
 護衛騎士という立場を考えれば、さっきの忠告は明らかに職務を逸脱した発言だ。それでも王太子殿下への親愛と忠心から、言わずにいられなかったのだろう。
 ……彼はとても実直な人なんだわ。
 そう思えば、彼を少し好意的に感じられた。

 それ以降、私の横が鎧の騎士様の定位置となった。
< 34 / 265 >

この作品をシェア

pagetop