敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 意外なことに、あれから彼は敵愾心も露わな最初の態度が嘘のように親切だった。常に一番近くで私を見守り、休憩中は手ずから水や菓子などを手渡し、細々と気遣ってくれる。そんな彼に、私もすっかり打ち解けていた。
 そうして三日も経てば移動中も窓を開け放ち、私たちは会話をするようになっていた。
「次の休憩まであと一時間ほどかかる。疲れていないか?」
 兜のために少しくぐもった彼の声は聞きにくいはずなのに、なぜか私の耳に誰の声よりも明瞭に響く。
「疲れるだなんてとんでもない。私はずっと座っているだけですし、なにより移ろう景色を見ていると楽しくて」
「この辺りは荒野ばかりが続く。面白いものなどないだろうに」
 鎧の騎士様は不思議そうに返した。
「いえ。この厳しさ、荒々しさもまたいいのです。もっとも、どんな光景も私には初めてですから、目にするすべてが新鮮で。本音を言うと出発からずっと、疲れを感じる間もないくらいわくわくしっぱなしです」
「初めて?」
< 35 / 265 >

この作品をシェア

pagetop