敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「力? 実際にそんな力があるとすれば大いに結構だ。なんにせよ、そんなくだらん理由でか弱い少女を吊るし上げるなど、女王は頭がどうかしている」
 彼は〝力〟についてあまり本気で捉えていないようだったが、それでも私への処遇に憤りを隠そうともしない。そんな様子にこそばゆいときめきを覚えた。
 心の落ち着かなさを誤魔化すように、スカートの皺を伸ばすふりをして彼から目線を外す。彼もまた一旦口を閉ざし、周囲には馬車が立てるカタカタという走行音が響いた。
 ……彼は不思議な人。最初は怖く感じたけれど、実際はとても懐が深くて優しい。鎧の下にいったいどんな素顔を隠しているんだろう。
 精霊たちを除き、これまで関わってきた人たちは私を虐げるか、腫れ物に触るように接するかのどちらか。人と過ごす時間は私にとって苦痛だった。でも、彼は違う。
 私の人生において、誰かと一緒に過ごす時間をこんなに心地よく感じたのは初めてだった。けれど楽しい時間は永遠ではなく、一日、また一日と旅程は進む。
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