敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 迫る別れの時を思うと、胸がツキリと痛んだ。

***

 俺が使者団に合流して五日目。
 この日は春先にしては珍しく、朝から照り付けるような太陽が大地を温めていた。
 全身鎧を身に着けて愛馬のブラッシングをしていたら、すぐ横に張った天幕の入口が揺れた。
「いい天気ね。今日は暑くなりそうだわ」
 入口の垂幕が割れ、ひょっこりと顔を出したエミリアが空を仰いだ。
「起きたのか?」
「あ! 騎士様、おはようございます」
 声をかけられて初めて俺に気づいたようで、彼女は少し焦った様子でペコリと頭を下げた。
 小動物めいたその仕草がなんとも可愛らしく、兜の下で頬が緩んだ。
「あぁ、おはよう」
 彼女のもとに歩み寄ると、スーッとした清涼な香りが鼻腔を擽る。ハーブかなにかだろう。彼女が纏う爽やかなその香りに吸い寄せられるように隣に並び、ちょうど俺の肩口の高さにある彼女のつむじを見下ろす。
 ……抱きしめたらすっぽり腕の中に収まりそうだ。
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