敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 軽い調子で告げると、エミリアがさくらんぼの色をした唇からくすくすと笑い声をこぼす。すっかり俺に打ち解けて自然体の彼女の様子に、嬉しさが込み上げる。
 その声もその微笑みも、蕩けるように甘い。もしかして彼女はこの世の美しいものや愛らしいもので形作られた奇跡なんじゃないかと半ば本気で考える。
「あの、どうかされました?」
 怪訝そうに問われ、ハッとして束の間の物思いから意識を今に戻す。
「いや、なんでもない。向こうに朝食の準備が出来ている。食べたら出発だ」
「はい」
 緩く頭を振り、朝食へとエミリアを伴った。

 朝食を終えると、俺たち一行は野営を畳んで移動を始めた。
 照り付ける太陽を鎧に受ける。全身鎧を纏った俺の体感温度は、実際の気温以上に高い。辛くないといえば嘘だが、夏場の出陣経験もあるし、もとより体力には自信がある。だから耐え難いほどではなかったのだが、エミリアは俺を心配しているようだった。
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