敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「ガルニア王国で暮らすにあたり心配事はないかと聞いたら、『一日三食とまでいわずとも、保存の効く固パンでも融通してもらえるとありがたい』と言われて思わず耳を疑った。さりげなく聞けばアドランス王国では満足に飯がもらえず、裏宮の庭で野菜やハーブを育てて腹の足しにしていたらしい」
「まさか、一国の王女が……」
「父王が亡くなった十歳頃からずっとそんな環境に置かれていたようだ。そしてガルニア王国でも彼女は当たり前のようにそれに準じた暮らしを送るつもりでいる。『離れの宮の片隅にでもひっそり置いてもらえたらそれで十分』と言っていた」
 ハウイットは唇を真一文字に引き結び、無言のまま憤りとやるせなさを滲ませていた。
「そんな状況にあったのに、驚くことに彼女はアドランス王国の民の行く末を心配してみせる。我が国の支配下に入れることに感謝まで口にしていた。一方で、彼女は自分の幸せを望まない。正直、俺には彼女の行動原理が信じ難い。清らかすぎる彼女がまぶしくもあって、同時に胸が痛い」
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