敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 愛らしい仕草に、俺は笑みを深くした。ところがそんな俺とは対照的に、彼女の表情は見る間に強張っていく。
「殿下、過分なお気遣いをいただきありがとうございます。ですが、お名前は、やはり今後もジークフリード殿下と呼ばせていただきたく存じます」
 姫が口にした台詞に、頭を鈍器でガンと打ち付けられたような衝撃を覚えた。
 なんとか表面上は平静を装いつつ、内心の動揺は激しかった。
「なぜだ?」
「私は此度の嫁入りに際し、近い将来殿下がお迎えする正妃様と殿下の仲を邪魔するような真似は絶対にしないと心に誓っております。殿下を愛称でお呼びするのは、その誓いに触れてしまうと思うのです」
 動揺をひた隠して真意を問うと、姫は少し困ったように首をかしげながらも整然と告げる。
 彼女の弁に、俺は声を詰まらせた。それは初めて彼女に会った十日前、鎧で顔を隠し、身分を偽った俺が彼女を牽制するべく口にした内容だった。
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