敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「あの! ご安心ください。私はきちんと身の程を弁えております。なので今後、私への過剰なお心遣いは不要でございます」
 動揺して黙した俺に、彼女は微笑みの形を作って口にした。
 輿入れ旅の九日間姫と共に過ごした俺には、その笑顔が心からのものでないことなど瞭然だった。紛い物の笑みしか向けてもらえない自分がひどく惨めで、しかしそれを不満に思うことすらおこがましい。全ては己の行動が招いた結果なのだ。
 荒れ狂う感情の波を拳を握りしめて抑え、穏やかな表情を心がけて彼女に語りかける。
「待ってくれ。今回の婚姻について、俺と君との間に認識の相違がある。ひとまず君の部屋に案内する。そこで話をさせてくれ」
「とんでもない。これ以上、私ごときのために殿下のお時間をいただくわけにはまいりません。どうか案内は、侍女か侍従のどなたかにお願いしとうございます」
 姫の態度は丁寧ではあるが頑なで、取り付く島もなかった。
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