敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「俺は明日、ひと足先に使者団を離れることになる」
 それはあまりに唐突な知らせ。
 耳にした瞬間、目にする景色が一気に色をなくしたような気がした。
「……え。王宮まで一緒に行ってくださるのではなかったのですか?」
 少なくとも、私はそのつもりだった。今日を含めてあと三日、彼といられるものだとばかり……。
「すまないが、どうしてもやらなければならないことがある」
「……あの、騎士様。私たちは王宮に着いたら、もうお会いすることはできないのですよね」
「あぁ、そうだな。あちらで会うのは難しい」
「そうですよね」
 気まずそうに答える彼に、ひどく傷ついている自分がいた。だけど、考えてみればそれも当然のこと。私に付き従うのは、彼にとっては仕事。職務の範疇を越えるくらい細々と世話を焼いてくれるのは、ひとえに彼の温情と親切心によるところなのだ。
「そう落ち込むな。君にはおれ……いや、王太子殿下がいる。今後は彼を頼ればいい」
 騎士様はひどく残酷なことを言う。
 私はゆるゆると首を振った。
< 53 / 265 >

この作品をシェア

pagetop