敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 当たり前と言えば当たり前だが、過剰によそわれたパンは食べきれず、ジュースも飲みきれないままグラスに半分以上を残している。これまで食べることに苦労してきた分、残すことが心苦しく、眉が下がった。
 すると隣からヒョイと腕が伸びてきて、皿とグラスを奪っていく。
 ……え?
 見るとジークフリード殿下が残ったパンをふたつに割り、ポイポイッと続けざまに頬張る。驚く私を余所に、今度は掴んだグラスを傾けてひと息で飲み干す。
 え、えっ、えぇえええ!?
「さて、では行くか」
 殿下は満面の笑みで飲みきったグラスをコトンとテーブルに置くと、呆気に取られて固まる私を促して席を立つ。
 腰に腕を回して引き寄せられて、逞しい体にすっぽりと抱き込まれるような恰好になる。
 ち、近い……!
 長身の殿下の胸のあたりに目線の高さがくる。鍛え上げられた胸筋や肩の厚みが着衣越しにも瞭然だった。
 吐息や体温まで伝わる近さにドキドキして、顔から火が出そうだった。
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