敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 互いに放心したように立ち尽くしていたが、殿下が先に持ち直し私の方へと踏み出す。湯上りの殿下はほのかに石鹸の香りを纏い、鼻腔を甘く擽った。
「なぜ君がここに?」
 殿下の声にハッとして、慌てて目線を逸らす。
 思わずまじまじと見てしまったが、夜の部屋で半裸の殿下と向かい合っているこの状況は明らかに異常だ。意識したら途端に恥ずかしさに襲われて、顔から湯気が出そうだった。
 しかも彼の眼差しと声は、日の下で見聞きするより明らかに艶っぽい。殿下が醸す滴るほどの色気にくらくらした。
「ま、待ってください! あの、まずはなにか上に着て……っ」
「あぁ、すまん」
 せめて肌を隠して欲しい。真っ赤になって告げれば、ジークフリード殿下はハッとしたように脱衣室に取って返す。
 殿下はすぐにバスローブを羽織って出てきた。紐を腰で結びながら、長い足で寝室の奥で立ち尽くす私のもとへやって来る。
 ……えっ!? まさか、バスローブ一枚!?
 ここは普通にシャツを着てほしかった。
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