敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 こんなに密着した状態で男性とふたりきりになるのは初めてのこと。しかも場所は殿下の寝室。その上、私の目線の高さはちょうど彼の胸あたりだ。バスローブの前合わせから覗く太い首や鎖骨、厚い胸板をどうしたって意識せずにはいられない。
 その逞しさが眩しくもあり、少しだけ怖くもあり……。無意識にランプのキャリングハンドルをギュッと両手で握り込み、彼の視線から逃げるように俯いた。
 すると突然、落とした視界に殿下の手が伸びてきて──。
「きゃあっ!?」
 手が触れる直前、私は大げさなほど肩を揺らして後ろに飛び退く。その拍子に片方のスリッパが脱げてしまい、バランスを崩して転びそうになった。
 振動でランプのオイルが波打ち、炎がなびく。
「危ない!」
 ジークフリード殿下は慌てて私の手からランプを取り上げ、反対の腕で私の腰を支えた。
「っ!」
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