敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「いや、今後は俺からむやみやたらに触れたりしないと約束する。君が嫌がることはしないから、安心していい」
 そう口にする殿下の目がひどく傷ついているように感じ、私は弾かれたように首を横に振っていた。
「違うんです。けっして殿下に触れられるのが嫌だったわけではないんです」
 ……昨日、馬車からのエスコートで手を取られた時も。今朝、風で乱れた髪を撫でられた時も。そして今だってこれまで経験したことのない状況に戸惑ってしまっただけで、けっして嫌ではなかったのだ。
「だが、君はさっき俺が手を差し伸べただけで、ひどく慌てていただろう」
 身の程は弁えてしかるべきで、殿下と必要以上に親密になるのは好ましくない。けれどこんなふうに誤解によって殿下を傷付けたままでおくのは違う。
 昨日の初対面の時も私がよかれと思って伝えた言葉で、殿下の瞳は陰りを帯びた。きっとそこには、なにかしらの行き違いがあったのだろう。
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