敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 殿下はなにごとかブツブツとつぶやいているようだが、その内容は聞こえない。
 気のせいだろうか、指の隙間から覗く目もとや頬、耳が赤くなっているように見えた。
「殿下?」
 私の呼びかけにジークフリード殿下はピクンと肩を揺らし、ゆっくりと手を外す。引き結んだ表情で私を見下ろす殿下の顔は、やはり湯上りというのを差し引いても紅潮していた。
「なぁ、エミリア。俺の思い上がりで泣ければ、今の発言は君が少なからず俺のことを男として意識していると、そう聞こえた」
 改めて口にされると戸惑ってしまう。でも、要はそういうことなのだろう。
 是とも否とも答えられず固まったままの私に、ジークフリード殿下は蕩けるような表情で続ける。
「俺たちの婚姻が決定してひと月足らず。顔を合わせたのは、まだたったの二日だ。急ぐつもりはないが、これから徐々に俺という男のことを知ってくれたら嬉しい。そして俺も君のことをもっと知りたい。俺はそのための時間を惜しまない」
 なぜか殿下は、私と親密になることを望んでいるらしい。
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