敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 煩いくらいに鼓動が跳ね、ともすれば期待してしまいそうになる。けれど、理性の部分が重く警鐘を鳴らす。その時、脳裏に『身の程を弁え、くれぐれも殿下に取り入ろうなどと思わんことだ』という鎧の騎士様の言葉が蘇った。
 一瞬で、スッと頭が冷えた。
「恐れながら、殿下は根本の部分で勘違いしておいでです」
「勘違い?」
 急に表情を引きしめた私に、殿下は困惑を前面にした。
「殿下が仲を深めるのは正妃様となる女性であり、私ではありません。そういった時間は、未来の正妃様と持つべきです。そこをお間違えになってはいけません」
 私の言葉に殿下の表情が強張る。
 ここまでの甘やかな空気が霧散して、室内の温度が一気に下がったように感じた。けれど、私と殿下で甘い雰囲気になりかけていたのがそもそも異常なのだ。
「出過ぎたことを言ってすみません」
「……いや」
 殿下はばつが悪そうにたったひと言だけ唸るように答え、黙り込んでしまった。
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