敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 瞼を開けると、殿下が頭上で満足げに笑っていた。僅かに弧を描く唇に目が留まり、カッと頬に熱が集まる。
 取られていた腕が離れ、殿下の温もりが遠ざかる。それを寂しいと感じた自分に狼狽えた。
「今朝伝えた通り、明日は乗馬服でおいで。……おやすみエミリア、よい夜を」
 殿下が手ずから扉を開き、私は促されるまま軋むような動きで自分の部屋に入る。
 彼は最後に惜しむように私の頭をひと撫でし、扉を閉めた。
 その姿が見えなくなっても、甘やかな微笑みの残像と彼の残り香が私の胸を高鳴らせる。そっと指を額にあてたら、さっきの感触がつぶさに蘇り、苦しいくらいドキドキした。
 熱に浮かされたようにふらふらと寝台に向かい、ポフンと横たわる。
「……あ、ランプを置いてきてしまったわ」
 殿下の部屋にランプを置いてきてしまったことに気づいたが、今さら取りに戻る勇気はなかった。
 寝台から目線だけを扉に向ける。
< 90 / 265 >

この作品をシェア

pagetop