敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 あの扉の向こうは収納なんかじゃなかった。ひとり改めて考えれば、王太子の部屋と間続きであるこの部屋の意味も自ずと知れる。
 ただし、この部屋を私に宛がった殿下の真意はわからない。
 ……ジークフリード殿下は人質の側妃である私に、いったいなにを求めているんだろう。
 そのまま答えのない堂々巡りを続けていたけれど、夜半過ぎ睡魔に誘われて眠りについた。だから直後にふたりの部屋を繋ぐ扉がゆっくりと開き、宵闇に紛れて入り込んだ人物が私の寝顔を見下ろしていたことには気づかなかった。
《僕、あの男気に入らないなぁ。鎧姿で初対面のエミリアにあんなひどいことを言ったくせに、手のひらを返したように気のある素振りなんてしてさ》
《そうか? 俺はなかなか気概のある男だと思うぜ。事実、エミリアを正妃に据えようと頭の固い古狸ども相手に奮闘してんじゃねーか。まぁ、敗戦国の王女っつー身分がネックになって相当手こずってるようだがな》
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