敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
「エミリアは馬に乗るのは初めてか?」
「はい」
「そうか。ランロットは穏やかで賢い馬だ。俺が後ろから支えているからなにも心配いらん。乗せるぞ」
 殿下は私の脇を掴んで軽々と馬上に乗せる。初めて乗った馬の背中は思ったよりも高く、緊張で体が強張った。
「俺に体を預けて、寄りかかっていろ。ゆっくり走らせる」
 後ろに殿下がヒラリと乗り上がり、両腕を私の体の前に回す。彼の胸にすっぽり抱き込まれると、不思議なことに硬くなっていた体があっという間に綻んだ。
 殿下は片手で手綱を握り、反対の腕で私のウエストを支えた。背中越しに伝わる肌の温もりと逞しい感触に鼓動が速くなるのを感じる。羞恥とときめき、そして出会って三日で覚えるには不可解とも思える殿下への絶対の信頼と安心感が複雑に折り重なって胸に同居していた。
 ……ヘンね。そわそわして落ち着かないのに、心の奥がホッとする。この不思議な気持ちはなんだろう。そういえば鎧の騎士様と一緒にいた時も、今とよく似た心地がしていたわ。
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