敵国王子の溺愛はイケメン四精霊が許さない!~加護持ち側妃は過保護に甘やかされています~
 湖の向こうに聳え立つエーテル山。麓の黒と冠雪の白とのコントラスが美しいその山が、湖の澄んだ水面に上下反転した形でクッキリと映り込んでいた。
「逆さ山だわ……! なんて綺麗なの!」
 目の前の光景は、まさに絶景と呼ぶに相応しい。
「どうやら間に合ったようだな」
 私たちは並び立ち、朝日に照らされた美しい逆さ山を眺めた。
「ここは空気が澄んだ早朝の時間帯が一番美しい。どうしても君に見せたかった」
 なるほど。日が高くなってくると、徐々に雲が出始めて水面に映る山の輪郭が不鮮明になってきた。殿下の言う通り、早朝が最も景観に優れた時間と言えるだろう。
「本当に、素晴らしいものを見せていただきました」
 感動の余韻が醒めず、ホゥッと感嘆の息をこぼす。
 すると突然、殿下が苦しいくらいの力で私の肩を抱き寄せた。
「あの! ジークフリード殿下、苦しいのですが……っ」
 私の訴えに、殿下はハッとした様子で抱きしめていた腕の力を緩めた。
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