純・情・愛・人
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毎年バレンタイン前は休日に大きなターミナル駅へ出かけ、商業ビルの専門店街を回ってこれっていう物を探す。

和菓子派なお父さんにはどら焼きでも何でも、まず自分が食べてみたくなるのが鉄則。美味しそうなのはきっとおいしい、という持論で。

宗ちゃんはいつ逢えるかが分からないから日持ちするもの限定だ。それならいっそネクタイとかにしたいところだけど、クリスマスと誕生日のバランスを考えると、食べもの飲みもの路線を外せない。

形は形で、気持ちの大きさを表すわけじゃないと分かっていても。そこにこだわってしまうのが女心かもしれない。

賞味期限もあって、平たいお餅の中に胡麻餡の入った半生菓子を早速お父さんに手渡した。

『娘ってのは、ありがたいやなー』

照れ臭そうに笑い、お母さんにもおすそ分けしていた。お返しは外にご飯を食べに行くのも恒例だ。愛情を伝える意味で、バレンタインは親子のコミュニケーションツールのひとつ。お菓子メーカーに踊らされるのも悪くない。と思う。





大本命の宗ちゃんに逢えたのは、十四日を五日ほど過ぎてからだった。
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