純・情・愛・人
「おー、その朝倉クンだ」

制服だった頃のあどけないニンマリ笑顔と重なって。当然の疑問が口から零れた。

「どうして宗ちゃんちに朝倉君が」

「まあイロイロなー。その話はまた今度にするわ、会長待たせてるから急がねーと」

「あ、・・・うん」

肩を揺らして歩き出した彼に続き、こんな再会もあるのかと大半が驚きで、懐かしさが後から追いかけてくる。

そう言えば朝倉君はまるで普通だった。ここに居るわたしを不思議がっていなかった。・・・有馬の家との関係を知っていた?今までどこで出くわしたこともなかった彼が?

わたしの同級生が出入りしてたら宗ちゃんが黙っているとは思えない。堂々と勝手知ったる風で、昨日今日の新人さんでもなさそうだった。

頭の中で跳ね回る『どうして』をいったん箱詰めにし。広い玄関先でコートを脱ぎ、ショートブーツをタタキにそろえて中にお邪魔する。

ホールの正面奥は厨房で、いつも通される客間は左手奥の、広縁から中庭が見渡せる高級料亭のようなお座敷と決まっていた。

「・・・失礼します。会長、園部のお嬢さんが着きました」

朝倉君が障子戸の前で外から一礼すると、内側から音もなく開き「入りな」とおじさんの声がした。
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