純・情・愛・人
高二の一学期。始業式から一週間経って席替えをした。今度は一番廊下側の前から三番目。左隣は制服を着崩し、どちらかと言えば悪目立ちする男子。派手目な女子とも賑やかにして、種類の違う自分には絡んでこないだろうと思っていた。

『なー、コレなに?』

配布物が回ってくるたび、肘をつつかれるようになった。答えると作ってない笑顔が返った。そのうち業務連絡的な会話に雑談も混じるようになっていった。

「広くんのスパイだったんだ」

思わず零れた。少し呆れ気味に。

「そんなマジメじゃねーよオレ」

朝倉君は吹き出し、信号待ちで人の悪そうな横顔が覗く。

「薗部になんかあったらすぐ教えろって、ガキが粋がってカワイイのなんの。コウキとは、そっからの腐れ縁みてーなもんか。しばらくはアイツのお守りしてっから、イヤでもまた会っちまうかもな」

「朝倉君はべつに嫌じゃないから・・・」

「まあオレが言うことじゃねーけどさ。惚れてる女がアイジンになるって聞かされて、黙ってられねーのは当たり前なんじゃねぇ?」

もたれた背中に発進の振動を感じながら、さらりと言われた。
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