純・情・愛・人
「園部もハラ決まってんだろ。だったら手加減しねーでコウをブチのめせよ。そのほうが後腐れねーし、骨はオレが拾ってやるわ」

どっちの応援をしているのか。でも、見えない手で背中を叩かれて憑きものが落ちた気がする。躊躇って中途半端に傷付けるのはエゴだ、その心臓を狙って息の根を止めないと。広くんが生まれ直せない。

やっぱり不思議だった。ほんの一学期分、同級生だっただけなのに言葉を信頼できているのは。

「朝倉君て・・・いい人?」

「どーだか」

「極道になるから高校をやめたの?」

「そーでもねーかなぁ」

「永征会にいたの知らなかった」

「あー、オレは岸川の回しモンだから」

わざとらしくニンマリした声。

散らばるピースが嵌まったり合わなかったり。脳にこびりついた『岸川』の名前は一生忘れない、宗ちゃんのお見合い相手。さっきは広くんのお守りをしてる・・・って。有馬の家にも自由に出入りしていて、一体どういう。

「ネタバレはこの辺にしとかね?」

先回りされて口を噤めば。

「あとの楽しみがなくなっちまう」

笑う朝倉君がどうして極道を選んだのか。いつか訊いてみたいと思う。



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