純・情・愛・人
2-2
その夜遅く宗ちゃんが電話をくれた。昼間のことをどう話そうか迷っている間に静かに切り出される。

『明日の夕方、親父さんに挨拶に行くと伝えてくれるか』

理由は訊ねなかった。ただ頷いた。

『・・・大丈夫だ、心配するな』

宗ちゃんの見えない掌が優しく頭を撫でた。
まるでわたしの中を見透かしたように。







「オレだってな、気持ちよく『じゃあ娘を頼む』って言ってやりてーのはヤマヤマだわな」

居間のコタツを囲み、上座から時計回りにお父さん、宗ちゃん、わたし。卓上には手土産の桜餅を取り分けた和皿と、湯呑が人数分。宗ちゃんが靴を脱いで上がったのは二度目だ。

「けどな、宗。カオルを面倒見るったって、嫁さんもらって子供ができりゃ情も移るじゃねーかよ。んな惨めな思いさせたくねーやな、親としちゃあ」

頭を掻きながら、お父さんが苦そうに渋り続ける。

「オレにスジ通しに来た覚悟はホンモノだろうけどよ、先が短けーなら勘弁しろや」
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