純・情・愛・人
電球色のダウンライトにしっとり包まれたリビングは、時間も何もかもを切り離した二人だけの世界になった。

スプリングの鈍い軋み、堪えきれない啼き声、荒い息遣いが、押し寄せては引いた。

ほかの音が無くなる。理性も無くなる。真っ白になって宗ちゃんに浸食される、細胞という細胞が。

そのたびに生まれ直す。有馬宗吾をもっと深く愛したいわたしへ。

前に会っていたマンションの部屋は、宗ちゃんの為にできることが限られていた。ここだったら尽くせる自由も天井がない。引っ越しを思い切ったのは、お父さんに急かされただけが理由じゃなかった。

「行きたい場所を先に考えておけよ?」

お風呂上がりにわたしの髪を乾かすのがルーティンになった宗ちゃんの仕草を、鏡越しに見とれるのがわたしのルーティン。

「どこにしようかな」

「どこでも構わないが、渋滞と人混みは覚悟するんだな」

「分かってますよーだ」

意地の悪そうな顔をされたけど、子供の頃から車酔いと人酔いをしがちなのは本当だ。宗ちゃんがわたしをあまり遠くへ連れ出さないのも、優しさなのを知っている。

宗ちゃんは優しい。

先月のお見合いの席で六月に結納が決まったこと、遅くても年内には入籍することを、業務連絡ぐらいの温度で話してくれた。今度のデートがその埋め合わせだったとしても。

優しさに罪はないから。
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