愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
たしかに彼はそう言っていた。『子どもができたら離婚すればいい』と。
子どもはもちろん、あたたかな家庭を夢見ているとは言いだせなくなってしまった。碧唯の負担になりたくない。
「南はそれでもいいの?」
千賀子に聞かれて答えられなかった。
それでいいのかダメなのか、今の南には答えが見つからない。
結婚を決めてからというもの、急に甘いムードで迫ってきたりする碧唯の本心がわからず、南は翻弄され通しなのだ。彼の頭の中に本当に離婚の二文字はあるのかどうなのか。
ブライダルサロンでされたキスを思い出すと同時に、なぜかふとローマで会った咲穂の顔が浮かんだ。
親しげに碧唯に接していた彼女を思い出すと、どういうわけか胸に黒いものが広がっていく。
「南?」
いつまでも黙り込んでいる南の顔を千賀子が覗き込んだ。
「あっ……ごめんね」