愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「ローマで瀬那くんに紹介されたときはコンタクトを着けてなくて、南さんの顔がよく見えなかったの。ドが付く近眼でね」
「眼鏡も掛け忘れたそうだ」
彼女の説明に碧唯が付け加える。
「だから『ぼんやりしてて』って……」
「そうなの。さすがに初対面なのに至近距離で見るわけにはいかないでしょう? そうしたいのはやまやまだったんだけど」
咲穂が口元に手を添えてふふふと笑う。
(そ、そうだったんだ……)
〝美人なんてみんなは言うけど、ぼんやりした顔。大したことないわ〟
そんな具合に、てっきり南に対する宣戦布告のようなものだと勘違いしていた。
碧唯に好意があって、いきなり現れた婚約者の南を排除したいのだとばかり。
そういえばとふと思い出す。
咲穂はしきりに目を擦ったり、碧唯をじっと見つめたりしていなかったか。
よく見えないからこその仕草だ。
強張っていた全身から力が抜けていく。
その場に座り込みそうなほどの脱力感に見舞われ、ふらっと目眩に襲われる。