愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「べつに嫌いってわけじゃない」
「そう? 方々から言い寄られるのにことごとく振るから、最近はゲイなんじゃないかって噂まで立つくらいだったの」
「ゲイ!?」
「おい、余計なことを言うな」
碧唯の制止もなんのその。咲穂はそれを逆に面白がって続ける。
「それがローマにいきなりフィアンセだって南さんを連れてきたでしょう? みんなびっくりよ」
「……私も今、びっくりしました」
そんな噂を立てられていたのも、女性をあますところなく振っていたのも。
もちろん昔からモテていたのは知っているけれど。
「日本に南さんがいたからだったのね」
「おい、武井、もうそのくらいにしろ。待ち合わせじゃなかったのか?」
「あっ、そうだったわ。いけない、彼を待たせちゃう」
咲穂は腕時計で時間をたしかめると、慌てたようにしながら「じゃ、またね!」と手をひらひら振って駆け出した。
ヒールの音と彼女の後ろ姿がどんどん遠くなっていくのを見送りつつ、車に乗り込む。