愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
「いや、南が庁舎に訪れたほう」
「あ、それはその……碧唯くんとずっとすれ違いだったから、一度きちんと話をしたくて行ったの。でも私にも気づかずに地下鉄の駅に消えて行っちゃってね……」
咲穂の事情を知った今なら誤解だとわかるが、そのときはふたりが想い合っているんじゃないかと勘繰って、ひどく傷ついた。
「悪かった。武井とはそのあとすぐ別方向の地下鉄に乗ったから」
「うん。もう咲穂さんとの仲は誤解してないよ」
でもそれが、翌日の口喧嘩に繋がったのも事実だ。沖山にマンションまで送られたあとの碧唯との言い争いは、今思い出しても悲しくなる。
それと同時に、ああして心の内を吐き出したのが今のふたりに繋がっているとも思えた。
「俺は南しか見えてないから」
「――っ、と、突然そんなこと言わないで。心臓に悪い」
思わず胸を両手で押さえる。手のひらに強い鼓動を感じた。