愛はないけれど、エリート外交官に今夜抱かれます~御曹司の激情に溶かされる愛育婚~
南がこれまでとは違った目で碧唯を見つめていると、すぐ近くから『うわっ、やっちゃったよ』と落胆する声が聞こえてきた。
そちらを見ると、金髪の男性がなにやら慌てて自分のスーツを手で払っている。碧唯に紹介された中にはいなかった人だ。
『どうかしましたか?』
気になって南が声を掛けると、その彼は困ったように胸元を指差した。
(あっ……)
スーツのジャケットの襟部分が汚れている。彼が左手に持った皿にはティラミスがのっていた。
きっとそれをこぼしてしまったのだろう。
『よかったら、これを使ってください』
南はバッグからハンカチを差し出した。それで綺麗に拭えるとも思えないが、なにもないよりはいいだろう。
『ありがとう! 助かるよ』
彼はフランス語訛りの英語でうれしそうに南からハンカチを受け取り、クリームがついた胸元を拭った。